歯科コラム

あなたはなぜ歯磨きをしているのでしょうか?


Illustration depicting people thinking

あなたはなぜ歯を磨いているのでしょうか?

  • 虫歯になるから。(漠然と)
  • 食事した後、食べ物のカスが付いていると虫歯になるから
  • 小さい頃から磨いているから。(親が磨けと言っていたから。)
  • みんなが磨いているから。

患者さんに質問するとほとんどの患者さんからこのような答えが返ってきます。

では、歯磨きの一番の目的は何でしょうか?

食べ物のカスを取らないと虫歯になる?

皆さんは歯を磨かないと虫歯や歯周病になるという事はご存じだと思います。

ではなぜ磨かないと虫歯や歯周病になるのでしょうか。

虫歯が出来る条件は、口腔内にいる細菌と、食べ物のカス(食品だけではなく、飲み物やお菓子などの砂糖の残り)が揃ったときです。

Substances that adversely affect tooth decay

歯周病も同様に細菌が関係しています。

歯磨きの特に大切な目的はお口の中にいる細菌(バイ菌)をなくすためなのです。

まあ、細菌と食べ物のカスとに明確な境があるわけではないので、「歯に付いた汚れ」全般だと思って頂いても良いと思います。

しかし、大事なのは「細菌が相手」であるという事。

目に見えないほど小さい(1粒の大きさは数マイクロメートルと言われています)者が相手なので、適当に磨いていてはダメなのです。

「歯ブラシで磨くよりもバイ菌を洗口剤などの薬でやっつければ良いでしょ!」

多くの方はこう考えると思います。

確かにそうなのですが・・・

boy doing mouthwash

洗口剤(イソジンなどの薬剤も含めて)でお口をゆすげば確かに、細菌の数は減ります。

しかし、実情は歯に付いている歯垢の表面の細菌しかやっつけられないのです。

では「薬を濃くしたら効くのでは?」と思いますよね。

これだと、今度は私たちの体の粘膜(細胞)がダメージを負ってしまうのです。

バイ菌をやっつけても粘膜が薬でただれてしまうのです。

抗生物質も同じです。

お口の中の細菌はある程度はやっつける事が出来ますが、体の中にいる腸内細菌も「必要もないのに被害をうけてしまう」のです。

やはり地道に歯ブラシやフロスを使って細部まで落とすしかないのです。

人間は細菌と共存しています

Good bacteria, bad bacteria, opportunistic bacteria set

人が生きていくためには実はいろいろな細菌の力が必要なのです。

例えば腸内細菌。

悪玉菌の増殖を抑えたり、ビタミンを作ったり、免疫機能の一端を担ったりしています。

そのため、抗生物質などでお口の中の細菌を減らすことは出来ても、もしやり過ぎてしまうと体の方が大変なことになってしまうのです。

口腔内の細菌も防衛機能の一部として働いています。

これも前の項目と同じなのですが、お口の中の細菌もやはり悪い細菌が入ってきたときの防御の役もしていると言われています。

それなので、すべての細菌がいなくなっては困るのです。

歯に付いているバイ菌や、歯周ポケットの中にいるバイ菌だけが居なくなれば良いのです。

ちなみに、とても歯磨きに熱心な方から次のような質問が時々あります。

「舌にいるバイ菌も落としたほうがいいのでしょ!?」

舌には襞(ヒダ)がいっぱいあります。

中にはすごく深いヒダがある方もいらっしゃいます。

確かにその中には沢山のバイ菌がいます。

でも、だからと言って舌ブラシやスクレーパーなどでゴシゴシこすっては駄目です。

バイ菌を取ることももちろん大切ですが、舌には「味蕾(みらい)」と言って「味」を感じるための器官があります。

歯ブラシなどでこすり過ぎてしまうと、この味蕾を傷つけてしまい最悪、味が分からなくなってしまいます。

もしも 舌の汚れが気になる方は柔らかい歯ブラシや専用のヘラ状の舌のスクレーパーで2~3回軽く撫でるくらいにしてください。

girl brushing her tongue

舌のヒダがすごく深くて気になっている方は栄養に問題があると言われています。

力ずくで磨かないようにしてください。

歯科と内科の先生への受診をお勧めします。

力強く磨いてはいけません

歯磨きの時、一生懸命に歯垢を取ろうとして力強く磨く方が結構いらっしゃいます。

虫歯になりたくない、歯周病を予防したいという思いからそうなると思います。

力強く磨けば確かに多くの汚れは取れるのですが、強く磨いたために起きる「

問題」があるのです。

sadness teeth

問題とは?

  • ・歯ぐきが下がってしまう。

歯ぐきが下がると何がいけないのでしょうか。

歯周病が治癒していくと歯ぐきが下がることがありますが、これは改善している状態です。いっぽう、歯ブラシで下がる場合が問題なのです。

歯ぐきが下がるというのは歯肉(ピンク色をしている柔らかい軟組織の部分)の内側にある歯槽骨という歯を実際に支えている骨が溶けているのです。

歯を綺麗にしよう、虫歯にならないようにしようと一生懸命に磨いていたのに、磨き過ぎたために骨がやせてしまっているのです。

更には歯ぐきが大きく下がると歯の根っこが見えてきます。

歯の根っこは虫歯に非常になりやすく、年老いて上手く歯が磨けなくなってくると歯の根っこがあっという間に虫歯に侵されてしまうのです。

歯ぐきを一度下げてしまうと、まず元のように歯ぐきを上げるのは事実上困難なのです。

下げないようにするしかないのです。

  • ・細かいところの歯垢は意外と取れていない。(意外とみがき残しが多い)

また、歯ブラシの動かし方が大きかったり強かったりすると歯の形に毛先が追従できないので歯の根もとなどの虫歯の好発部位に歯垢が残ってしまうのです。

toothbrush

ちなみに、ブラシの毛先が、1か月くらいで広がってしまう方は歯ブラシが強すぎます。

私は半年たっても歯ブラシは広がりません。

ただし、半年も使っていると毛先が傷んでしまい汚れを取る能力が劣化しますので、遅くとも2~3か月以内には新しいものに交換してください。

そして歯医者さんに徹底的に通って、適切に磨ける技を習得してほしいと思います。

私たちの医院は歯ブラシが上手になることはとてもとても大切なことと考えています。

何度でも相談に乗りますので、一緒に練習しましょう。

具体的な歯磨きの仕方については別の機会にお話しします。

今回は歯ブラシをする理由についてお話ししました。

まとめ

いかがだったでしょうか。

歯ブラシの目的は細菌を落とすためである事を理解して頂けたでしょうか。

細菌はあっという間に増殖します。

特に寝ている間は唾液の量が少なくなり,細菌が繁殖する格好の時間です。

どんな時よりも寝る前の歯磨きに手間暇をかけてください。

family with toothbrush

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