今日は今まで見て来た中でなかなか衝撃だった患者さんのお話をしていきます。
あそこまでひどい状態の人を見たことがない…っていうほどひどい状態で、素人からみても変だなあの歯…?って思うほどだと思います。
この患者さんは70代の女性で、かかりつけ歯科医師を信じて、長年通い続けていたようです。
実はこの患者さん、以前、そのかかりつけ歯科が休診だったため、一度急患で当院にいらしたことがありました。
その時、歯を長持ちさせるために、しっかり治療をした方がいいとお伝えしたのですが、またかかりつけところでみてもらうと帰られたのです。
その患者さんが帰られた後に、うちのスタッフみんなで「あの患者さん、あんな口元になってしまっているのに、またかかりつけのところに戻るんだって・・・かわいそう、うちで治療をしたらよかったのに」ってお話ししていました。
知識がないってことは怖いですね。
テレビでも、ネットでもなんでもいいので情報をキャッチして、いろんな知識や情報を知っていれば、なにかこの治療変だなとか気づくこともできたかもしれませんが、この患者さんはちゃんとした歯科の知識がないために、ある種マインドコントロールされているような状態でした。
患者さん、一度はかかりつけに戻ったものの、ちゃんと治療をしてもらえなかったので、3ヶ月後には状況はさらに悪化して、再度うちに助けを求めてきました。
この時には、上の前歯が90度に直角に前に突き出しているような状態で、噛めない、口を閉じられないと来院されました。
前歯が直角に突き出してる状態?って意味わからないですよね?笑
想像つかないと思うんですけど、おそ松くんに出てくるキャラクターのイヤミっていうやつに似てるような、というかそのものみたいな…しかも、歯もあり得ないくらい1本1本が大きく不自然なデザインで口が閉じれるわけがないような状態でした。患者さんは歪な歯を隠すため、片時も離さずハンカチでいつも口を覆っていました。
確かに、だれが見ても口元に目が行ってしまうような口元なので、そうせざるをえなかったと思います。とてもかわいそうでした。
見た人じゃないとあの歪な状態はわからないとは思うのですが、イメージしやすいようにイラスト描いてみました。
漫画なんかではなく、本当にこのイラストのような歯だったんです。もともとこの患者さんは出っ歯なわけじゃなかったんだと思います。
でも、噛み合わせや適合の合わない差し歯を入れられて、どんどん噛み合わせが悪くなり、だんだんと前歯はグラグラ揺れはじめ、最終的に直角に前へ出てしまったのだと考えられました。
噛み合わせを考慮しないで、ただ揺れを止めるためだけにレジンや歯科用の接着剤でガチガチで留めるという応急処置を受け続けていました。
もともと前歯は連結してなかったのにベタベタに接着剤が付いていて、一体化していました。
歯の周りには接着剤やレジンがベタベタにくっついているため、表面がザラザラになって、プラークが落としづらいのでしょう、歯石もいっぱい付いていました。
歯周病や虫歯が悪化・・・膿や細菌ですごい悪臭を放っていました。
こんな汚い歯が口の中にずっとあるなんて、すごい気持ち悪かったでしょうし、本当にひどい状態でかわいそうでした。
- いろんな歯科医院で働いてきたけれど、たまになんでこんな治療をするんだろう?どこで習ったんだろう?と思うような治療をする歯科医師に遭遇します。
・根っこが短い歯に頭でっかちな大きな被せ物を被せて半年ももたないような物を作る歯科医師 - ・あり得ないほどの量の麻酔を打ってから治療する歯科医師(私は何度かアナフラキシーショックになっている患者さんを目の当たりにしました)
- ・歯を削る機械で、歯茎を削り切る歯科医師(出血が止まらなく血だらけ、さらに歯茎のラインがぐちゃぐちゃに・・・)
- ・インプラントの専用の機械を使わないで、歯を削る機械で無理やりインプラントを埋め込む歯科医師(高速回転で骨に埋め込んで、骨が壊死して大変なことに・・・)
- ・フラップ手術(歯肉を切開する手術)したのに、縫合(縫い合わせる)や歯周保護剤をしない歯科医師
教科書やベテランの歯科医師からも習ったことのない様な独自の治療法を、患者さんの予後のことも考えず行う歯科医師がいます。まるで練習台です。
20年歯科衛生士をやっていれば、いろんな先生を見てきていますし、これはまずい治療だな・・・ということはわかります。
信じられませんが、そんな治療をする歯科医師は少なくありません。
いままで、私がこんな歯科医師に出会ってしまった場合、所詮私は歯科衛生士なので歯科医師に意見したりはできなかったです。私は黙って見ているしかできなかったです。
歯科衛生士として、患者さんを守るために最大限できるとするなら、担当医を変更して、粗悪な治療を受けないように回避するように予約をとることくらいしかできなかったです。
こういう歯科医師のもとで働いていると、すごく気分も悪くなりますし、自分も知りながら悪に加担しているかのような罪悪感も感じます。
今の歯科医院で働き始めて、そういった点で患者さんに気を使うこともなくなり、落ち着いて、安心して仕事ができます。
それは、今の院長は本当によく勉強していますし、自分自身も知らなかった知識を教わることもできるからです。
院長は毎週のようにセミナーや勉強会に参加し、正しい知識を身につけています。
私たちにもいい勉強会、セミナーがあれば情報を教えてくれます。
医療の世界は新しい技術、新しい情報が次々と出てくるので、それに追いつけるように情報をキャッチし続けることはとても重要です。
院長は東高円寺で23年間も患者さんを見続けていますが、古い考えで凝り固まることなく、新しい情報も柔軟に取り込んでいるところは、私はとても尊敬しています。
‘’知ることによって人生の選択肢が変わる‘’
知識があれば守れた健康も、知識がないと健康を損なう可能性もあります。
知るということは大切です。日々勉強をして、患者さんに多くの知識や情報をお伝えしていくことは私たちの重要な役割ですと院長はいつも言います。
最近は歯周病菌が体の中に入って、心筋梗塞、高血圧、認知症などあらゆる病気を引き起こす引き金となっていることは知られてきています。
歯や口の中の健康だけでなく、体全体の健康を目指すことは当院の方針です。
ですから時には、「歯茎の治りが悪いから、こういう栄養素が不足していませんか?」
「お鼻が詰まっていてで、口呼吸になっているので、まず耳鼻科にいってみませんか?」
など歯のことだけではなくて、全身の健康へのアドバイスを欠かしません。
院長は患者さんの将来の健康や予後のことを考えて治療をしています。
患者さんの体調的にも10年後に通院できるような状態なのか、患者さんの未来のことを想定して今やっておいた方がよいことはなにか、今できる最大限の治療を患者さんに提案しています。
必要であれば、時間を取ってお話だけのときもあるほど丁寧です。
院長の知識と技術が安心できるので、今働いているスタッフも院長に歯の治療をしてもらっていますし、退職したスタッフも院長の治療を受けたくて患者さんとして来院することもしばしばあります。
これって、素晴らしいことだと思います。
自分が働いているところの歯科医師に治療してもらいたいとスタッフが思う歯科医院は信用できると思います。
話を最初の患者さんのはなしに戻すと、当院のような歯科医院で治療していれば、この患者さんもこんなことならなかっただろうにと、大変気の毒に感じます。
結局、この患者さんの前歯はぷらぷらで、残すことが厳しかったため、先日抜歯をしました。もはや抜けているのに無理やり奥歯にくっつけて固定していたのを除去した感じでしたが・・・
長年グラグラ揺れる煩わしい前歯とさよならした患者さんの口元はすっきりし、すごく嬉しそうでした。
今後は、残せる歯を長持ちさせるために、定期的にクリーニングを行い、歯科衛生士から歯の磨き方のコツをお伝えして、口腔内環境を整えていきます。
歯のないところには、入れ歯や被せ物を入れて、見た目の回復と噛めるように機能の回復もしていきます。
この患者さん、透析していたり、全身的な健康にも問題がありましたが、今後、口の中の環境が整うことでそういった点にもアプローチできるのではないかとも感じます。
入れ歯が入れば、食いしばって力も入りやすくなりますし、歩くときや運動するときのバランスも保ちやすくなります。姿勢がよくなれば腰痛や肩こりの軽減にもつながるでしょう。
また、噛めるようになるので、色々な食べ物も食べられるようになるので、栄養も取れるようになるでしょう。
歯って本当に全身の健康に関わりが深いですね。
この患者さんが歯だけではなく、心身ともに健康になっていけるようにこれからサポートしていきたいです。