歯科コラム

CTを導入しました


Empty office in a dental clinic computer 3D tomography of teeth and jaw.

先月8月に、当医院にCTが入りました。

今回のブログでは、歯科医院で使用しているレントゲン撮影について解説させて頂きたいと思います。

歯科でのレントゲン撮影の種類と特徴

歯科で使用するレントゲンには大きく分けて3種類のレントゲンがあります。

部分的に2~3歯分を撮影するデンタル。

お口全体(歯並び全体と少し上部の上顎洞付近)が撮影できるオルソパントモ。

そして今回導入したCTです。

単純に被ばく量だけを考えれば小さければ少ないし、大きく精密であれば多くなります。

デンタルとオルソパントモは被ばく量が少ないのですが、人の体は元々立体的なのに、それを2次元で表現しているため像が重なっており、簡単に言えば細かいところまでは分かりにくいのです。

デンタルとオルソパントモでの撮影の違いは、例えると町の風景の写真をビルの上から撮ったとします。その場合、景色は分かりますが眼下の建物のこちら側は見えますが裏側は映っていないので見えませんよね。でもCTだと、像を回転することによって裏側まで見られるのです。

この違いは大きいのです。

上の2枚の画像はCT で、1回で撮影したものです。 写真はどちらも同じ部位です。

1枚目の写真は上から見た写真です。2枚目の写真は同じ部位を横から見た写真です。

特にピンク色の丸の部分を見てもらうと、下の写真は根っこが2本あるように見えます。 しかし、上の写真で上部から見ると、コ の字型になっていて、実は1本の根っこなのです。このような根っこの形状は治療が難しいのです。予め、形状が分かっていると治療の正確さやスピードが変わってきます。

特に歯の根っこの治療をするとき、立体的に観察できるととても参考になります。

人の歯は根っこが曲がっていたり、神経の通り道が複雑な形状になっていたりします。

今まではそれを2次元的にしか見られませんでした。また、マイクロスコープを使わない場合は、手の感触のみで見えない世界を手探りで探検しているようなものです。

当院ではマイクロスコープを使っているのでかなりの範囲は見ることが出来ます。

それでも根っこの先までは光が届かないため、どんなマイクロスコープを使っても見えないのです。

根っこの治療でとても大切なのは先端の2~3mmです。この部分はもう手探りで想像しながら治療するしかなく、経験値がものを言います。

CTが使えると、確かになんでも分かって治療が完璧に出来るようにはならないのですが、根っこがどちらに曲がっているかとか神経の通り道が1本なのか2本なのか、太いのか、閉じてしまっているかの状態が今までの2次元のレントゲンよりも分かるのです。

それにより、全くの手探り状態よりはやり易くなります。また、予後の予測も立てやすくなると思います。

レントゲン撮影での被ばくについて

ここで皆さんが心配になるのはレントゲン撮影の時の被ばく量だと思います。

結果から言えば、気にしなくて大丈夫です。

年に1~2回のCT撮影でもパイロットさんが仕事で何回か搭乗しているときに被ばくする量よりも低いのです。

例えば、パノラマレントゲン撮影の1枚あたりの放射線被ばく量は、約0.03~0.05ミリシーベルト、局部的に撮影するデンタルレントゲン撮影においては約0.01ミリシーベルト。

一方、歯科用CT撮影では0.2ミリシーベルトです。

これを1年あたりに被ばくしても大丈夫な撮影回数にして単純計算した結果を調べてみました。 すると、デンタル撮影では5000回、パノラマ撮影では1600回、歯科用CTだと500回に相当する被ばく線量になるそうなので心配はないということです。

CTのそのほかの活躍場所は?

CT画像が根っこの治療以外にどのように活躍するか、説明させていただきます。

立体的に把握できるCTの情報は口腔外科の領域で活躍することが多いのです。

例えば、親知らずの抜歯の時です。

親知らずの抜歯の時に問題になるのが下歯槽管です。

親知らずの歯の真下に走っている、神経の幹の部分になります。下歯槽管と親知らずの根っこが重なっていたり、根っこが曲がったり太っていたりすると抜歯が困難になります。この時にCTの立体情報が役に立ちます。 位置関係や状態が分かるので時間の短縮や安全性につながります。 2次元のレントゲン情報とは格段に違います。

他に役立つのは歯周病です。

歯周病は歯を支えている骨が溶けてしまう疾患です。目で見える歯ぐきの状態だけでは本当の歯周病の状態を知ることは出来ません。 骨の状態も理解できて初めて正確で必要な治療が出来るようになります。

歯周病の治療では2次元レントゲンでもかなり役立ちますが、かなり高度に進んでしまった歯周病は骨の吸収が一定ではなく骨の吸収は複雑な形状をしています。

それをCTで見ることによって、より詳しい情報が手に入り歯を残せる可能性も高くなります。

まとめ と お願い

このようにCT はかなり有効なレントゲンの撮影方法になります。 しかし、被ばくすることには違いはないので、メリットがデメリットを超えると判断したときに撮影するべきものです。 当医院ではCT はもちろん、他のレントゲンを撮影した場合には時間がある限り撮影したものをお見せして説明させて頂いています。  必要もないのにレントゲン撮影をすることは決してないのでご安心ください。

最後に、一つお願いがあります。

先ほども必要がないのに撮影はしないと書きましたが、お口を見て見るからに健康そうな場合も時々は撮影させて頂きたいと思います。

その理由は、やはり骨の状態や歯の間、詰め物の状態などは目で見ただけではわかりません。今までも「何でもなさそうだけど、念のため!」といって撮影して骨の異常や虫歯が見つかったことは何回もあります。また、疾患の進行が早い場合、2~3年で骨に変化が現れることもあります。 レントゲンを撮影したくない方はもちろん無理には撮影しませんが、2年前後くらい毎には撮影させて頂けたら早期発見に繋がると考えています。

撮影による被ばくよりも、早期発見に繋がることはメリットの方が遥かに大きいのです。

撮影費用の目安としては、オルソパントモ 1,300円くらい、CT 3,500円くらいです。

根っこの治療に使うCT は精密度が上がる撮影方法をするため、上顎(上の歯が並んでいるアーチ)と下顎 (下の歯が並んでいるアーチ)を必要に応じて別々に撮影させて頂きます。

特に小さいレントゲンならば、外を1日で歩いて浴びる自然からの放射線量よりも少ない被ばく量です。 例えば、レントゲンを撮影するよりも、日焼け止めを塗らないでひなたに一日中いる方が体には良くないのです。

その点をご理解して診療に臨んで頂けたら嬉しいです。


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